こんにちは!
株式会社レックの大友です!
例えば1億円のマンションを売買するとき、土地部分の金額が4,000万円で建物部分の金額が6,000万円で・・・など土地と建物の割合を決める必要があります。
この全体金額を土地・建物それぞれに分けることを按分(あんぶん)といいますが、どのような根拠で按分すればよいのでしょうか?
この按分の仕組みが分かることで、騙されたりするリスクが減り、実質値引き額で不動産を購入することも可能になります。
気になってきましたね?それでは解説していきます!
今回の記事の内容まで知っていると、不動産屋からも一目置かれるようになります。
悪徳不動産やも下手なことをしづらくなりますので、必ず押さえておきましょう!
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按分基礎知識
なぜ按分する必要があるの?
按分とは全体の売買金額を土地・建物に分けることだと説明しましたが、なぜ按分する必要があるのでしょうか?
それは ①建物の減価償却 ②消費税 の計算をするのに必要だからです。
①ですが、減価償却が分からない方は先にこちらの記事をどうぞ!
さて、建物の減価償却は建物の価格を耐用年数で割り返して求めます。
そうなんです。建物だけの金額が分からないと、減価償却が計算できません。
続いて②ですが、物を売買する以上は不動産であっても消費税がかかります。
しかし土地には消費税がかからず、建物にのみ消費税がかかります。
そうなんです。建物だけの金額が分からないと、消費税も計算できません。
不動産売買の時に按分が必要な理由が分かって頂けたかと思います。
按分の割合も結構もめるポイントだったりします
売主・買い主からみた按分
この按分ですが、買い主サイドから見たものと売主サイドから見たもので真逆の性質を持っています。
ここ、とても大事なのでしっかりと理解しましょう!
売主から見た按分
最初に売主サイドから考えてみましょう。
売主から見たら土地と建物、どちらの按分比率が高い方がうれしいでしょうか?
正解は・・・建物<土地 です。
ここでのキーワードは”消費税”です。
前述の通り、建物にのみ消費税がかかり、土地には消費税がかかりません。
つまりどういうことでしょうか?例を実際に見ていきましょう。
【パターン1】
不動産価格 1億円(内建物7,000万円、土地3,000万円)
上記の設定だと、この不動産を売却するとまず1億円が売主の下へ入ります。
しかし建物7,000万円の内、636万円は消費税ですので、後日納税する必要があります。
したがって実際に売主が手に入れる金額は以下の通りになります。
1億円 - 636万円 = 9,364万円
【パターン2】
不動産価格 1億円(内建物3,000万円、土地7,000万円)
こちらの場合だと、建物3,000万円の内、272万円が後日納税する消費税になります。
したがって実際に売主が手に入れる金額は以下の通りになります。
1億円 - 272万円 = 9,728万円
【それぞれの差】
パターン1とパターン2では364万円もの差が付きました。売っているものは同じ金額でも、按分の比率が違うだけでこれだけの差になります。
あなたが売主の場合は、土地の比率を高めた方が良いです!
買い主から見た按分
続いて、買い主サイドからも考えてみましょう。
買い主だとどちらの按分比率が高い方がうれしいでしょうか?
買い主の場合は売主とは逆に、土地<建物 になります。
こちらでのキーワードは”減価償却”です。
建物は減価償却できますが、土地は減価償却ができません。
念のため、もう一度減価償却の記事をご案内します。
買い主サイドも実際に例を用いて見ていきます。
【パターン1】
不動産価格 1億円(内建物7,000万円、土地3,000万円)
償却年数 10年
この場合、買い主は1億円を払って建物を購入しますが建物比率が7割を占めています。
年間の償却可能額は 7,000万円 ÷ 10年 = 700万円 です。
【パターン2】
不動産価格 1億円(内建物3,000万円、土地7,000万円)
償却年数 10年
条件はパターン1とほぼ同じですが、按分比率だけが異なっています。
年間の償却可能額は 3,000万円 ÷ 10年 = 300万円 です。
【それぞれの差】
按分比率が変わるだけで年間償却可能額が400万円も異なってきます。税率にもよりますが、法人の場合だと120万円程度法人税の納税額が変わります。
あなたが買い主の場合は、減価償却が大きくとれるため、建物の按分割合を大きくした方が良いです。
按分する3つの方法
さて実はこの按分ですが、実は〇対〇の比率で分けなさいという明確な決まりはありません。
田舎に立っている大豪邸の価値は、土地<建物 ですし都会に立っているボロ屋の価値はその逆になりますよね。
したがって按分するためには根拠となるものを示し、双方納得の上で比率を決定する必要があります。
ここでは実務的にどのような方法で按分を行うのか、それぞれどのような特徴があるかを解説します。
※あまりにも実際の価値と離れた按分は税務署から指摘が入ることがある点は注意が必要です。
1.固定資産税評価額を基準にする
こちらが最も一般的な按分の方法になります。
すべての按分において基準となるのは固定資産税評価額による方法です。
この固定資産税評価額は、売主側に開示請求をすれば見せてくれますのでいつでも簡単に確認が可能です。
【条件】
不動産価格 1億円
固定資産税評価額合計 6,000万円
・建物評価額 4,500万円
・土地評価額 1,500万円
【計算】
固定資産税評価額においての建物:土地が3:1なので、不動産価格もこの比率に基づいて按分します。
建物:1億円 × 3/4 = 7,500万円
土地:1億円 × 1/4 = 2,500万円
基本的にはこの方法で行います!
2.時価で計算する
固定資産評価額は時価とかけ離れている場合があり、時価で按分するのも一つの手です。
土地と建物、それぞれを計算する必要がありますがそこまで難しいものではありません。
土地は路線価や公示地価等、公表されているデータを基に計算します。
(路線価:https://www.rosenka.nta.go.jp/)
(公示地価:https://www.reinfolib.mlit.go.jp)
建物は国土交通省の建築統計年報のデータなどを基に計算できます。
(建築費:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000002.html)
按分の方法で交渉したい部分があるときに、うまく活用しましょう!
3.不動産鑑定士に評価依頼する
何らかの理由で、固定資産税評価額での按分がでは納得いかない場合だと不動産鑑定士に評価依頼して改めて評価額を算定してもらう方法があります。
しかし、不動産鑑定士の依頼には数十万程度の費用とそれなりの時間が必要です。
1、2を試してどうしても納得がいかない場合にのみ、利用してみましょう。
ここまでされる方は多くありませんが、引き出しとして持っておくといざというときに役に立ちます。
按分の裏ワザ
ここまで按分について解説してきましたが、実はこの按分を用いて「売主」にのみ可能な裏ワザがあります。
この裏ワザを使うには条件があり、それは売主が免税(消費税非課税)業者であることです。
課税売上が1,000万円以下であるなどの条件を満たす業者が非課税業者です。
居住用不動産の収入は非課税なので、広くやっていても免税業者の方も多いのではないでしょうか?
そんな免税業者は消費税がかかりません。
つまり、按分比率がどうであっても消費税を納めないので受け取る金額は変わりません。
これをどのように使用すればお得な売買ができるでしょうか?
例えば、購入希望者から5%引きの指値が入った場合です。
この時に、建物の按分比率を高くすることを材料に価格交渉を行います。
買い主は最終的な支払金額が安くなればいいので、建物の按分比率の増加を条件に値引きをせずに購入してくれる可能性があります。
按分比率をあまりにも現実と乖離したものにすると税務的に良くないので、常識の範囲内での提案ができる様、事前に準備しておきましょう!
変なトラブルにはなりたくないですよね
まとめ
今回は不動産売買をする際の土地・建物の按について解説しました。
少しマニアックな内容ですが、理解していただけたでしょうか?
今回の内容をさらっとおさらいしていきましょう!
【按分が必要な理由】
減価償却・消費税の計算に使用するため
【売主と買い主】
売主は建物<土地(消費税額を低くするため)
買い主は土地<建物(減価償却額を高くするため)
- 固定資産税評価額を基準に計算する(基本)
- 時価を求め、計算する
- 不動産鑑定士に評価依頼をし、計算する
免税業者の場合、値引きの指値に対して按分比率を交渉材料にする
減価償却について学びたい方はこちら!
按分に関しての記事、いかがだったでしょうか?
按分のような細かい知識を知っていると、不動産に詳しい人に分類されます。
不動産会社や銀行に相談に行っても一目置かれ、相談がしやすくなります。
当ブログでは他にも役に立つ不動産に関する記事をたくさん書いておりますので他の記事もぜひご覧ください!
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